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装具の調整で、歩行はどう変わる? 理学療法士が語るメソッドTAの利点

装具

装具の調整で、歩行はどう変わる? 理学療法士が語るメソッドTAの利点

多機能足継手の特性を活かした、臨床での装具選定

パシフィックサプライ株式会社
義肢装具士 小関俊介

2026-11-02

はじめに

メソッドTAはベッカー社が提供する、備品用の短下肢装具です。
トリプルアクション足継手を採用しており、最大の特長は、「初期角度(アライメント)」「底屈制動」「背屈制動」という3つの機能を、互いに干渉することなく完全に独立して調整できる点にあります。
さらに、バネ本来の高い剛性に加え、従来のバネ式継手や油圧制動を上回る強力な制動力を実現し、幅広い調整範囲と、優れた耐久性を備えています。
 
今回はメソッドTAを装具選定における評価用装具として導入している、戸田中央リハビリテーション病院 理学療法士 吉田寛也先生にお話を伺いました。


病院紹介


戸田中央リハビリテーション病院
医療技術部 リハビリテーション科
吉田寛也 先生

https://www.toda-reha.jp/

戸田中央リハビリテーション病院は、埼玉県南部の戸田市に位置する、200床規模の回復期リハビリテーション病院です。院内は4つの病棟に分かれており、すべての病棟において「回復期リハビリテーション病棟入院料1」および「回復期リハビリテーション強化体制加算」を算定しています。職員体制としては、リハビリテーション科医師が9名、リハビリテーションスタッフ190名が在籍しています。

私はその中で理学療法士2名・作業療法士2名の計4名からなる「装具診チーム」に所属しています。チームでは、週1回実施している「装具カンファレンス」や「装具外来」の運営と管理を担当しています。

 また院外での活動として、埼玉県理学療法士会の「装具療法地域連携対策委員会」にも所属しており、Webサイトなどを通じて装具に関する情報発信や相談対応、コラム執筆などの地域連携活動にも携わっています。
https://sougu.saitama-pt.or.jp/
 

メソッド TA の導入経緯と実績について
メソッドTAを使用するようになったきっかけは、新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科の田中惣治先生との共同研究です。共同研究を通してメソッドTAを使用する機会があり、その後も臨床の中で継続的に活用しています。
導入から約1年が経ちますが、月に2〜3名、年間で30名近い脳卒中の患者様に使用してきました。現在は、装具選定や歩行評価を行う際の評価用装具の一つとして活用しています。
 
メソッド TA を患者様へ使用する際の基準について
メソッドTAを使用するにあたって、明確な基準はあえて設けていません。
実際の臨床では、長下肢装具から短下肢装具へカットオフした段階で、「より良い歩行を目指したい」というケースや、最終的な装具を選定するにあたって「どういった装具が適しているか」を話し合う際の評価用ツールとして活用しています。
 
臨床の現場における「背屈制動」機能の必要性について 
リハビリテーションの中で背屈制動が必要な患者様は非常に多いと感じています。特に、初期段階で膝折れやエクステンションスラストパターンが見られる患者様に対しては有効だと考えています。
これまで脳卒中の方の装具の設定としては「底屈制動・背屈フリー」がスタンダードとされてきましたが、実際の臨床では、長下肢装具から短下肢装具へ移行する段階や、短下肢装具の初期段階において、背屈を適切に制動することで歩容が改善する患者様は多くいらっしゃいます。
 
ただ、リハビリテーションが進むにつれて、背屈制動を外せるようになるケースも多くあります。こうしたことから、治療段階に応じて背屈制動を選択できることは、大きなメリットだと考えています。
メソッドTAは、患者様の回復過程や治療段階に合わせて、底屈・背屈それぞれの制動力を柔軟に調整でき、必要に応じて制動を解除することもできます。そうした特長から、評価用としても治療用としても、非常に価値の高い製品だと感じています。
 
油圧装具(ゲイトソリューション)とバネ式装具(メソッドTA)の使い分けについて
油圧装具は歩行の角速度(スピード)によって制動力が変わるため、重度の患者様や、介助に不慣れな新人スタッフにとっては制動力コントロールが難しい側面があります。
一方、メソッドTAのようなバネ制動は、『体重をかけるだけ』で安定した制動力を得られるため、セラピスト・患者様双方にとって扱いやすく、導入のハードルが低いと感じています。
ダブルクレンザック継手のような従来のバネ式装具では、制動力が弱く、対応できるケースに限界がありました。しかし、メソッドTAはバネの剛性が格段に高くなったことで、十分な制動力を確保できるようになっています。そのため、より幅広い患者様に適応でき、治療のファーストステップとして非常に使いやすい装具になりました。
 
使用してみて感じたメソッドTAの「デメリットや今後の課題」を教えてください。

大きく3つの課題を感じています。
 

1.前額面への対応
メソッドTAは片側支柱の短下肢装具のため、内反の抑制が難しいです。特に痙性の強い患者様に対しては使いづらいと感じる場面がありました。別途、ストラップなどによる対策が必要だと感じます。

2.設定の複雑さ
機能が優れている分、その特性を十分に活かすためには、ある程度の知識や理解が必要だと感じています。設定の考え方を理解したうえで使用することが重要だと思います。

3.サイズ感のミスマッチ
小柄な体格の患者様、例えば身長150cm以下の女性などでは、Sサイズでも適合しにくいケースがありました。より幅広い体格の患者様に対応できるサイズ展開にも期待しています。

吉田先生のご感想

これまでは、「麻痺が軽いからゲイトソリューション」のように理学療法士の主観的な捉え方になりがちでした。しかし、メソッドTAでは、装具の機能という視点から歩行を考えることができます。実際に底背屈角度やバネの制動力の設定を変えることで歩容が大きく変化するため、セラピストの教育にも非常に役立つと感じています。
それ以上に興味深いのは、患者様自身が「歩きやすい・歩きづらい」という変化を直接感じ取れることです。もちろん、これまでの装具でも患者様から「歩きにくい」という意見をいただくことはありました。例えば、身体機能に対して装具の制動力が強すぎる、いわゆるオーバースペックになっていたり、反対に必要な制動力が足りていなかったり、足関節の角度がその方の歩行に合っていなかったりすると、患者様は「歩きにくい」と感じることがあります。今まではそのような意見があると、他の種類の備品を試す形で対応しておりましたが、装具を変えてしまうと、歩きにくさの原因が「足関節の可動域なのか」「装具の制動力なのか」「初期角度なのか」を細かく切り分けることが難しいという課題もありました。
メソッドTAでは、「背屈に制動力を追加する」「底屈の抵抗を強くする」といったように、一つひとつの設定を段階的に変えることができます。設定を少し変えるだけでも歩容が変化するため、その違いを患者様自身が実際に体感することができます。「この設定だと歩きやすい」「こちらは少し歩きづらい」といった感覚を確認しながら、より適した設定を探していけるのです。
また、装具の設定が患者様に合っていない場合には、患者様自身から「歩きづらい」と伝えてくれることもあります。つまり、患者様自身が歩行の変化を感じながら、歩きやすい設定を主体的に選択できるということです。そうして、自分に合った設定を納得したうえでリハビリテーションに取り組めることは、大きなメリットだと感じています。
そうした意味でも、メソッドTAはセラピストが評価・調整するための装具というだけでなく、患者様自身が自分の歩行を学び、より良い設定を考えていくための「学習ツール」としても非常に優れた装具だと感じています。

まとめ

今回は、メソッドTAを装具選定における評価用装具として導入されている、戸田中央リハビリテーション病院の吉田寛也先生にお話を伺いました。
お話を伺う中で特に印象的だったのは、装具の設定による歩行の変化を、患者様自身が体感できるという点です。設定を変えることで、「歩きやすい」「歩きづらい」といった違いを患者様自身が感じることができるため、セラピストが一方的に設定を決めるのではなく、患者様と一緒により良い歩行を探していくことができます。また、「この設定なら歩きやすい」と実感し、納得したうえでリハビリテーションに取り組めることは、歩行に対する理解や主体的な取り組みを促すきっかけにもなります。
 
単に「完成した装具を選ぶ」のではなく、設定を変えながら歩行を評価し、その人に合った装具を考えていく。今回のお話から、メソッドTAが装具選定のプロセスそのものをサポートするツールであると同時に、患者様自身の歩行学習を支えるツールとしても活用できることが強く印象に残りました。

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