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パシフィックニュース

ユーザーの可能性を一段引き上げる足部プロフレックステラ

義肢

ユーザーの可能性を一段引き上げる足部プロフレックステラ

パシフィックサプライ株式会社
義肢装具士 奥野麻弥

2025-10-01


― もっと自然に、もっと自由に歩きたい ―

そんな義足ユーザーの願いを形にしたのが、オズール社の最新足部「プロフレックス テラ」です。
柔らかさと力強い反発を兼ね備え、不整地でも安定した歩行を実現。
健常者に近いスムーズな推進を可能にし、ユーザーの可能性を大きく広げます。
本記事では、日常生活や仕事で実際に活用する
坂翼さんと、担当義肢装具士の遠藤龍義さんに、その革新性を伺いました。

プロフレックス テラ 製品情報はこちら >>

 


 
プロフィール

Terra(テラ)ユーザー:濵坂 翼
義足歴14年 40歳 空港勤務
ライナー:Iceross®アクティバ(OSSUR)
足部:プロフレックス テラ(OSSUR)
OSSUR オズール 製品情報はこちら >>



義肢装具士:
遠藤 龍義
義肢工房 ERbse(エルブセ)代表
義肢工房 ERbse HPはこちら >>

切断後もあきらめることなく、義足で創意工夫する日々

「本日は、インタビューへのご協力、ありがとうございます。まず、義足歴を含めた濵坂さんの自己紹介をお願いします」

濵坂さん:私は空港で働いているのですが、勤務中の事故が原因で14年前の2011年、26歳の時に右足を膝下で切断しました。義肢装具士の遠藤さんとのおつきあいは5、6年になります。
 


「初めて義足をはいた時は、どのように感じましたか?」


濵坂さん:初めて使った足部は、今は廃盤のウィローウッド社のパスファインダーという製品でした。入院中に両足義足の陸上選手が健常者の大会に出るのをテレビで見たのですが、実際に初めて義足をはいてみると、全然思うようにいきませんでした。痛みもありバランスもうまく取れず、竹馬に乗っているような感覚で、よくこれで歩いたり走ったりできるものだなと思ったのが、義足についての最初の印象です。手術を何度か行ってリハビリを重ねて、実際に職場復帰できたのは事故から1年半後の2012年の末でした。
 


「断端が成熟して安定した状態になるまで時間もかかり、大変でいらっしゃったんですね。義足を使い始めた当初、義足だからとあきらめなければならなかったことはありましたか?」 


濵坂さん:義足でなんてとても走れるもんじゃないと思いつつも、そうなると余計にやりたくなっちゃう性格なので、無理して走ろうとして転んだことも多々ありました。それでも、義足だからとあきらめたことは何もありませんでした。大型免許、大型特殊免許、牽引免許、大型二輪免許を持っていて、それぞれ切断後にもう一度テストを受けないといけなかったのですが、全部パスしました。どの車両も条件なしで運転できます。 
子どもと一緒に野球やサッカー、バスケットボールをしたり、自転車に乗ったりしますし、障害者の水泳大会で1位をとったこともあります。たとえば自転車の立ち漕ぎをするには、義足で足首が動かないから、ペダルを踏むのに重心のかけ方や体の動かし方をどうしたらいいだろうとあれこれ試すなど、義足だからできないとあきらめるのではなくて、どうやったらできるかという挑戦も楽しみになります。

義足になってからも、さまざま挑戦する濵坂さん

「義足を使いこなすための工夫を重ねてこられたんですね。これまで他にどのような足部を試されましたか?」

濵坂さん:最初の足部が廃盤になった時は、他の足部について知識がなかったので、これ以上のものが他にあるんだろうかとショックでした。ちょうどその頃に遠藤さんと知り合って、いろいろと教えていただいて様々なメーカーの足部を試すことができました。当時は、他に選択肢があることも知りませんでした。 
そして次に使ったのが、オズール社のプロフレックスXCトーションでした。足関節部分をねじる動作をすることが多くて、その動きに対応できる足部をいくつか試したのですが、実際に使ってみて一番良かったからです。トーションアダプターがあって、ねじった時にボンッと反発するのが私の好みでした。
 


プロフレックスXCトーション でお子さまとかけっこする様子

プロフレックステラとの出会い~第一印象とのギャップ~

「その次の足部が、現在使用されているプロフレックステラですね。オズール社のフィールドテストとして遠藤さん経由で使用を勧められたそうですが、実際に装着してみていかがでしたか?」

濵坂さん:事前にテラという、ものすごい足部が出たって聞いていて、期待のハードルが上がっていたのもありますが、正直な感想としては「あれ?これが?ものすごい足部?」というのが、テラを着けて初めて走った時の印象でした。でもこれだけ前評判が高い足部なのだから、絶対にもっとポテンシャルは高いはず、どうやったら使いこなせるんだろうと考えを切り替えて、いろいろ試しているうちにコツがつかめました。 
テラは健常者の足に限りなく近いというか、地面を踏んでから、徐々に体が前に運ばれる時や、地面を蹴って次の動きに移行する時の足首の動きがすごくスムーズです。以前のXCトーションは、ばねの感覚で上下に歩いていたのですが、テラは股関節をうまく使って前進するように歩くと、スムーズに反応してくれるんです。XCトーションを使う時の体の動かし方の癖がついていたので、テラをそれと同じように使うと違和感があったことに気がついたのです。
今までの自分の歩き方は何だったんだろうと思いました。足部の機能に頼り、義足側の股関節をうまく使えていなくて、上半身も動いていない歩き方をしていたと気づかされた足部でした。

テラでつかめた新しい歩き方【アキレス腱を使う感覚】

「XCトーションの時は、ぐっと踏み込んで跳ねるような反発を使って歩いていたのが、テラだともっと滑らかな歩行ができるようになったのですね。テラでの歩き方のコツはいったいどうやってつかまれたんでしょう?」
 

濵坂さん:まずテラでいろんな動作をやってみました。ものすごく大股で歩いたり、走ったり、ジャンプして止まったり、くるっとターンしてみたりと試してみたんです。あれこれ試すなかで、ターンする時に踏み込んでポンと反対側に行けるという感覚が感動的で、この感覚を使えばいいんだと気づいたので、ものすごい大股歩きをしてみたら、本当にアキレス腱があるかのように伸び縮みして、足部の裏側が使えていると感じました。

 


プロフレックステラ でお子さまとスポーツする様子

ゆっくり歩く時、ものすごく歩きやすいですね。XCトーションだと上への反発が強いので、一歩一歩踏みしめて体重をかけてゆっくり歩いていましたが、テラだと足首の沈みでゆっくりと歩けちゃうんですよ。そこから早く歩こうと思った時は、アキレス腱を使う感覚で後ろに体重をかけてすっと歩けます。

 


プロフレックステラ で階段をのぼり - おりする様子

「XCトーションでも歩けていたけれど、いわゆる“義足歩行”になっていたということですよね。筋力を使わずに、義足部品の力を借りた歩行だったと気づかれたのかもしれませんね」 

濵坂さん:そうですね。テラでの歩き方を知る前、XCトーションを使っていた時はカバンなど物を持つ際、義足側に持っていないとうまく歩けませんでしたが、テラだと左右どちらで持っても歩けるようになりました。テラを使って体の使い方が間違っていたことに気づけて、歩き方を見直すことができたのです。この歩き方ができるようになった今では、XCトーションでも荷物はどちらでも大丈夫です。
 


プロフレックステラ バッグ左右交互持ち 

「すごいですね。テラのユーザー様からのリアルな声をお聞きできてうれしいです。テラを試して、新しい歩き方、体の使い方を発見されたんですね」

ユーザーの可能性を一段引き上げる足部

「フィールドテスト期間を終了し、販売がスタートした今年4月、すぐにテラをご購入いただきました。購入の一番の決め手と、今の状態を教えていただけますか?」 

濵坂さん:テラを購入した決め手は「歩きやすさ」と「バランスよく何でもできる」という点ですね。テラだと階段も走って登れるし、階段の2段飛ばしも自分で引っ張り上げなくても足部がポンと反応してくれて楽にできます。テラを使い始めて本当にストレスがなくなりました。子どもとバスケットボールをしても、動きが滑らかになって走ったり跳んだりしやすいです。
 
遠藤さん:当初はXCトーションと違って、テラは足関節部分のねじれがないのがちょっとな、という懸念もありましたよね。
 

濵坂さん:そうですね、テラはXCトーションのように回旋運動機能はないですが、柔らかい沈み込みと反発があるので、そこはマイナス点にはなりませんでした。
 


「ところで、実は
濵坂さんが黒のフットカバーを日本で初めて購入された方なんです」

 
濵坂さん:義足をもう変に足の肌色に似せずに、別枠のアイアンマンチックな感じにしたいなと思いました。家族の反応もすごく良かったので黒のフットカバーに決めて、ソケットも合わせて真っ黒にしました。


 


「最後に、テラだからこそ、
濵坂さんがこれから挑戦したいことは何かありますか?」

 
濵坂さん:マリンスポーツをやってみたいですね。テラはフットカバーを自分で外せるので、終わった後の掃除も楽ですし、トライしてみようかなと。しかも足部本体の足底部分に裏地が付いているので、カーボンが傷つきそうって恐る恐る扱わなくても、シャワーでサッと洗ってポンと置けます。
 


「今回、
濵坂さんからお話を伺って、メーカーの説明動画や資料ではわからない、実際の使い勝手や利点を知ることができてとても勉強になりました。ありがとうございます。担当POの遠藤さんは、今回の濵坂さんのテラの使用事例について、どのような感想を持たれたのでしょうか?」

 遠藤さん:
濵坂さんはもともとすごくきれいに歩かれていましたし、XCトーションが濵坂さんの活動度に対応できる最高レベルでこれ以上の足部はもう出てこないだろうと思っていたのが、テラの出現で覆されました。 
テラをはいた
濵坂さんが体の使い方を工夫して、今までとかなり違うやり方ですごく上手に歩くようになったのを見た時は衝撃でした。でも、義足の扱い方、体の使い方を見たら本当に納得できて、濵坂さんの方法をそのまま他の義足ユーザーさんに伝えてやってもらうと、みんな綺麗に歩くことができるようになるし、テラを使うとさらにその歩き方を実現しやすくなるんです。 
テラは正常歩行、健常者の歩き方のイメージがつかみやすい足部だと思います。以前は義足だから、いわゆる義足歩行になってもしょうがないと思っていた部分がありましたが、テラを試してみて「ここまで義足パーツは進化しているんだ。ユーザーの可能性を広げるためにも、義肢装具士ももっと勉強しないといけない」と、とても勉強になりました。

もうテラ以外の足部は考えられません

「最後に、今後足部を新しくするとなったら、またテラを選択されますか?」
 

濵坂さん:今はテラ以外の足部は考えられないですね。どんな動きをするにしてもバランスがいいんです。片足でのバランスもとても安定していて、しゃがみ動作やそこから立ち上がる動作、すべてにおいて優れていてどんな仕事でも対応できると思います。いろんな方に使ってもらいたいなと思える足部なので、もっと知ってもらいたいですね。あと、テラでこれがあればって思うのは、ユニティを付けてもらうことですね。そのタイプが将来的に出たらいいなと待ち望んでいます。

取材を終えて


JAPO学術大会でお会いした濵坂さん(左)と遠藤さん(右)


今回のインタビューを通して感じたのは、プロフレックステラの革新性だけでなく、濵坂さんと遠藤さんの間にある強い信頼関係でした。新しい足部の性能を最大限に引き出すのは、ユーザーの挑戦する気持ちと、それを支える義肢装具士の伴走です。その二人三脚があってこそ、歩行の可能性は大きく広がっていくのだと実感しました。

プロフレックス テラはデモ機もご用意しています。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
義肢装具士 奥野麻弥

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