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パシフィックニュース

肢体不自由特別支援学校におけるリフト導入

リフト・移乗用具

肢体不自由特別支援学校におけるリフト導入

肢体不自由特別支援学校におけるリフト導入

伊丹市立伊丹特別支援学校

2020-06-15

肢体不自由特別支援学校の現状

本校は、肢体不自由特別支援学校であり、在籍する児童生徒の多くは、重度かつ重複の障害があります。この度、リフト導入に至った中学部は、生徒7名が在籍しており、内6名が日常生活の全般において全介助を要する生徒です。中学生という年齢は成長期のはじまりであり、体重の増加が著しい時期でもあります。順調な成長は喜ばしいことなのですが、重度の障害があり、自分自身の体を保持することができない生徒にとっては、本人の体への負担は大きくなり、関節脱臼などのリスクも高まります。

学校の日々の教育活動では、各授業の他、摂食(給食)や排泄など、学習場面に応じて様々な姿勢変換や移乗などの介助が必要です。登下校用の車椅子、学習用の座位保持車椅子やクッションチェア、休憩やトイレ介助用のベッドなど、どの生徒も、複数の生活姿勢があり、毎日、平均10回以上、乗り降りをします。様々な身辺介助のうち、特に低緊張の生徒を抱き上げる介助の際は、注意とスキルが必要になります。

介助者がしっかりと体を寄せて生徒の体全体を抱きかかえ、生徒の体への負荷を最小限にできるようにしつつ、力を込めて抱き上げます。十分に安全面へ配慮しますが、生徒にとっても介助者にとっても身体的負担が伴うことは否めません。

リフト導入の過程

毎日の教育活動を現状の職員体制で乗り切ろうとしていくうち、1学期の早い段階で、複数の職員に体力的な限界と心理的な負担感の増幅があり、負担軽減の策を見出すことが切実な課題となりました。併せて、「ノーリフティングケア」の考え方にも思い至り、介助される生徒の自立支援の視点に立った安全なケア、且つ、介助する職員の負担軽減につながる方法として、「リフト導入」の検討が現実的なものになりました。

今までにも、校内からリフト導入を提案する声はありましたが、初めての経験に声を荒げて拒否をしたり泣いてしまったりする生徒たちがリフトに不安を感じるのではないかという危惧から、リフト導入を見送っていました。しかし、切実な現状の中、急速に意識改革が進み、「リフトが安全安心なものであるか検証してみたい。」と、中学部の職員がリフトを体験することになりました。生徒の下校後の教室で、職員が生徒役になり、ベッドから車椅子に移乗するなどの体験をしました。「スリングで体全体が包まれる感覚。」「ゆっくり引き上げられ、不安はない。」「安心感があり、リラックス気分になる。」と、当初に感じていた危惧を払拭することができました。

そして、本格的に導入の試みが始動しました。第一印象で生徒がリフトに不安や恐怖心を感じないように、楽しい体験学習の一つとして授業に取り入れ、クラスにリフトを登場させることにしました。

 

【自立活動:「中学部に『たのしいリフト』がやってきたよ」】


初めてのリフトに、はじめはやや緊張気味の生徒でしたが、笑顔でリフトにのる教師の姿を見て目を輝かせたり、遊園地のアトラクションやパレードのような曲の雰囲気で楽しい気分になったりし、「自分もリフトにのってみたい」という気持ちが生まれたようでした。

あっさりと不安なくリフトの体験ができ、生徒にとっても、「リフトは、楽しくて面白いもの」「かっこよくてチャレンジしたいもの」「抱っこよりも楽しいもの」という印象になりました。生徒の体験の試みが無事に進み、その後は順調にリフトの導入をすることができました。

 

リフト導入で広がった可能性

日常的にリフトを活用できるようになり、実感したことがたくさんあります。一番大きな利点は、介助される生徒も介助する職員も安心安全で楽しくコミュニケーションできるということです。抱き上げによる介助とは違い、生徒も職員も体に力を入れることがないので、ゆとりがあり、生徒と職員が対面してゆったりと笑顔でやりとりできます。介助者の体格やスキルに左右されず、ゆっくりと一定した動きで移乗できるため、安全の確保もできました。

スリングで包まれている生徒は、体に無理な負荷もなく、人に身を委ねる心理的な負担も体の密着もないので、中学生として個人の自立心を尊重する意味でも意義の大きいことでした。

また、職員は、1日平均で約8~10回の抱き上げによる介助がなくなり、体力的にも心理的にも負担が軽減され、本来の教育活動に邁進する余力が生まれました。授業や学校行事において、生徒の活動を極度に限定せず、より明るい展望で計画できるようになりました。その一例が「2泊3日の修学旅行(和歌山)」の実現です。重度の生徒にとっての遠隔地での宿泊旅行は一大イベントです。バス等による長距離の移動の他、入浴介助や客室利用の問題があり、引率者の負担が過大で、介助負担の大きい生徒の活動は制限される場合もあります。

今回、購入したリフトは折りたたみ可能で軽量なタイプだったので、貸切の観光バスのトランクに積み、休憩のトイレや立ち寄り先に持ち込んで活用することができました。旅館からも最大限の理解と協力を得られ、浴室や客室(和室)でのリフト使用もでき、快適な旅行が可能になりました。

リフト導入は、今後も本校の生徒の自立支援やQOLの向上につながると確信しています。
リフトは、学校における教育活動に欠かせない一員となっています。