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リオニー(RHEO KNEE)のある生活

義肢

リオニー(RHEO KNEE)のある生活

リオニー(RHEO KNEE)のある生活

パシフィックサプライ株式会社 事業開発本部

2020-03-16

初春の候といえどもまだまだ肌寒い雨模様の土曜昼下がり、待ち合わせ場所の奈良県心身障害者福祉センターで穏やかな笑顔で迎えてくれたのは、リオニーユーザーの山口善久さん(54歳・右大腿義足ユーザー)。
毎週のように汗を流す車椅子バスケの練習の後に、インタビューに応じてくれた。

右足を切断して35年以上と義足のベテランユーザーの山口さんは、義足をより身体や生活にしっくりと合わせるために、自身で器用にフォームカバーを改造したりと、アイデアをめぐらす創意工夫の人だ。
 
「義足だけじゃなくて、何にでも、どうしたら良くなるかなって考えてやっちゃうんですよ」と笑う。
 
現在、日本国内のリオニーユーザーの多くは労災保険による認可を受けているが、山口さんは障害者総合支援法に基づく手続きでリオニーを利用されている。
 
リオニーを手に入れて2ヵ月。義足使用歴の長い山口さんだからこその知見を知りたいと、リオニーのある生活について伺った。

階段の交互降りも安心。今の義足は自分史上最高です

---2019年12月に義足を新調されてから2か月経って、使い勝手はいかがですか?膝継手リオニーと足部プロフレックスピボットという、最新タイプの義足を履かれているんですよね。
 
リオニーはめちゃめちゃ楽しい義足です。
 
膝も足部も多数履いてきましたが、今までで一番セッティングがうまくできてて、ものすごく歩きやすいです。義足で階段を交互降りするようになったのは初めてです。
 
これまでにも、階段の交互降り機能を持つ膝継手はいくつか着けてきましたが、実生活で交互降りはしていませんでした。
 
歩くとき、座るとき、バランスを崩したときと場面が違っても、義足のイールディングがいつも同じ圧力だったので、その時々のバランスや荷重のかかり方でどうしても不安な部分が大きかったからです。
 
でも、リオニーを着けてからはずっと階段は交互降りですよ。電機メーカーで電子部品を作る仕事をして、国内外の出張も多いのですが、社内や出張中での移動の速度も上がりました。
 
※注※イールディングとは
膝継手の機能の一つ。義足に体重をかけることで、適度な油圧抵抗を伴いながら膝が曲がる機能のことです。急激な膝折れを防ぎ、安全に階段や下り坂を交互に降りる動作などが可能となります。

 

 

 

---なぜ、リオニーだと安心して階段を交互降りできるでしょうか?
 
リオニーには安心してしっかりと体重をかけられるからです。リオニーは体重のかけ具合によって、膝の動きや足の振り出しを調整してくれます。
 
歩行時や座る時などシーンごとに自分に合うように義足を調整してもらっているので、その調整の違いが動作時にすごく効果的に表れています。だんだんと使いこなせるようになってきました。

2019年8月 初めてのリオニー試着で自然な動きを体感

---リオニーを初めて試着されたその日に、すぐスロープを交互降りされている動画を拝見しました。リオニーは最初から扱いやすかったのでしょうか?
 
義足が納品された最初の頃は怖かったですよ。足首の可動域が以前のものより広くなったから、なんだかグラグラした感じがしました。
 
歩くと地面をテコみたいに足底で受けているような、これまでにない感じで、その感覚がつかめるまで2週間ほどかかりました。
 

自分を義足に合わさなくても、リオニーは僕に合わせてくれる

でも、いったん感覚がつかめると、この可動域の広さがすごく有効に働いているのがわかるようになります。
 
今は試着時よりも義足が自分に合っている状態なので、もっとスムーズにスロープも降りられますよ。イールディングを効かせる、効かせない両方のパターンでいけます。

①イールディングをきかさないで降りる イールディングをきかさなくても足部の性能のおかげですごく歩きやすいです。体重を抜いてます。

②イールディングをきかせて降りる 降り方はぎこちなく見えますが、僕の感覚としては体重を膝にかけられていて、すごく楽です。 足音も静かです。イールディングを使うかどうかは場合によって使い分けています。

③スロープを上る 上る時も勝手に膝が足を振り出してくれて、ステップも大きく歩けるのでとても楽です。

④階段の交互降り 会社内の移動もスピードが上がりました。最後の1,2段の段差だったら、手すりを持たなくても交互降りができます。

---2ヵ月でリオニーをかなり使いこなされていますね!
 
まだイールディングの固さとか、さらに改善の余地がありますね。キレイに荷重できる時と固さが出る時があって、そのバランスのかけ方がどう違うのか自分自身でもわからない時がまだあるので、いろいろと試してもっと使いこなせるようになりたいです。

 

---スロープや階段の他にも、リオニーだからよいという点はありますか?
 
出張で電車や飛行機、バスなどによく乗りますが、移動時のちょっとした気遣いやストレスが自然と減って楽になりましたね。歩いている最中にちょっとスピードや歩き方を変えても、何の違和感もありません。
 
以前は義足に僕を合わせていました。でも、今は義足が僕に合わせてくれます。リオニーでは自分の好きなように歩くことができます。

信頼できる製造担当者はベストパートナー

取材協力:奈良県心身障害者福祉センター

---義足を履かれてかなり長く、もう30年以上になると伺いました。
 

右足を切断したのは高校2年生、17歳の時に大腿骨骨腫瘍という病気にかかったためです。検査入院してから手術までたった1か月ほど。切らないと死ぬと担当医に言われたので自分で決断しました。
 
親が、僕自身に切断するかどうかの選択を決断させるようにとお医者さんに頼んだそうですが、そうしてくれてよかったと思います。
 
実は当時のことがあまり記憶に残っていなくて…。よくテレビでやっているような、切断が人生の節目や大きな変化になったといった特別な意識はないです。周りの友達も、切断前と変わらず気をつかわないように接してくれました。

 


---度も義足を製作されてこられましたが、新調時に気を付けていることはありますか?
 
義足製作は10本以上超えると思いますが、これまでの義足のパーツも他人に選択してもらうのは嫌なので、ずっと自分で決めてきました。
 
僕は義足を製作する時は、病院ではなく川村義肢に出向いて採型から全工程を行ってもらいます。直接、製造担当者と話して、義足のセッティングについて細かく相談したり、何かいい部品が入ってないか尋ねたりしています。
 
ずっと同じ担当者で固定してもらっているので、細かな要望や感覚も話しやすくて安心ですね。

 

---二人三脚での義足づくりですね。ところで、セッティングが合わない義足だとどんな不具合が出ますか?
 
義足のセッティングが少し狂ってしまうと、違和感が生じて、気持ちも落ち込むし行動範囲も狭くなってしまいます。部品とセッティングの両輪がうまく回って初めて義足が自分にしっくりくるのだと思います。義足が完成した後もカスタマイズを試しながら、自分にとってのベストを探っていきます。
 
 

---ご自身で義足をカスタマイズされるなんて、驚きです。
 
リオニーは高機能なだけでなく、自分でカスタマイズするのがめちゃめちゃ楽しい義足です。もうこれまでの膝継手には戻れないかもしれません。可能であれば、リオニーのコンピュータープログラム部分も自分で触りたいくらいです。それだけの可能性が感じられる義足なので。
 
すべてのプログラムを細かく設定できなくてもいいから、安全に保てる範囲のなかでユーザーがプログラムを設定できるようにしてもらえたらうれしいですね。
 
今は、川村義肢の技術者に要望を細かく伝えて、プログラムの調整を繰り返してもらったおかげで、最初に比べてかなりしっくりと合ってきています。

 

---仕事に趣味にとアクティブに活動されていますが、義足のためにヘルプが必要だと感じることはないのでしょうか?
 
義足を履くようになってから、普段の生活ではサポートが必要だと感じることは全くないですね。逆にしてほしくないです。現状を受け入れて、良くするためにどうするか考えて行動するしかないと思っています。

 

---すごく前向きですよね。そういえば、フォームカバーもご自身で改造されていると伺いました。
 
フォームカバーの膝部分には自分でわざと切れ目を入れました(画像1)。膝を曲げた時にウレタンが薄くなって破れやすくなるのを防止するために、屈曲箇所に革の補強を当てています。
 
破れないようにと今までいろいろ試してきて、3年位前にこの方法がベストだと気づいたんです。それ以来、ボンドで破れたところの補修を繰り返すことがなくなりました。
 
マニュアルロックの操作部分も位置がわかりやすいように穴を開けてもらいました。
 
フォームカバーの後ろ側も充電しやすいように自分でストッキングに穴を開けて改造しました(画像2)。穴の縁を補強する革も自分で貼ってます。毎晩充電するのにいちいちストッキングを上げ下げしないでいいので楽ちんです。

画像1

画像2

自分のベストは自分で見つけるしかない

---義足のせいで諦めたことってないんでしょうか?
 
やりたいことはほとんどやってきたので、諦めたことは思いつかないんですが…。病気が見つかったのがバイクの免許をとってすぐのタイミングだったので、バイクには乗れませんでした。
 
切断後にクラッチ付きのバイクを借りて練習して、義足でブレーキを踏めなくても止まる方法も試して短時間は乗ることができました。でも、やっぱり大きいバイクに長時間乗るのは難しいなと思って。だけど、今は大型のスクーターや三輪もありますからね。

 

---挑戦してみての前向きな諦めですね。いろんなことを実際にやってみたいタイプでしょうか。
 
義足や車椅子以外のことも基本だけじゃなく、こうしたらどうなるかなと考えて試すのが大好きです。好奇心が抑えられないんです。もちろん失敗も多いですけれど。
 
義足のリハビリも人から教えてもらえるのは基本だけなので、基本以上は自分で学んで身に着けるしかないですよね。義足の調整も個人で感覚も違うので、自分のベストは自分で見つけるしかないと思っています。
 
リオニーももっと使いこなせるようになると思うので、これからもまだいろいろと試していきます。

取材を終えて

「僕の世間話が何か参考になるのかな」と恐縮されていた山口さんだが、インタビューが始まって機械的なことや、創意工夫の部分を尋ねると、目を輝かせて詳しく説明してくれた。
 
穏やかな雰囲気や語り口とは裏腹に、自分のことを他人任せにせず、身の回りのことをコントロールして、自分らしい人生を決めるという強い意志と実行力を感じる。
 
山口さんが今後もリオニーとともにどんな挑戦をされるのか、楽しみで仕方がない。きっと、別にたいしたことはないと照れながら、前を見据えて歩みを進めていくのだろう。
             
                                 
(取材)スイッチ・オン 平野亜樹