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パシフィックニュース

VOCA(音声出力会話補助装置)の活用事例 クイックトーカー12

AAC(コミュニケーション)

就労支援

VOCA(音声出力会話補助装置)の活用事例 クイックトーカー12

あるユーザーの導入から現在まで

パシフィックサプライ株式会社
新規事業開発推進部 藤田大介

2025-05-01

VOCA(ヴォカ)とはVoice Output Communication Aid(音声出力会話補助装置)の略で、録音・再生ができるコミュニケーション機器の総称です。
パシフィックサプライは、アメリカのエーブルネット社と販売総代理店契約を結び、約30年の取扱い実績があります。エーブルネット社のVOCA製品は、全国の特別支援学校、児童発達支援センター等さまざまな場所で、会話の不自由な方のコミュニケーションを補助するツールとして利用されています。
 
今回、そのなかでも「クイックトーカー12」というVOCA製品を利用している方の、導入時と現在の様子を、お母さまと作業所の方にお聞きする機会をいただきましたのでご紹介させていただきます。


利用者さま紹介



カナさん(仮名) 場面緘黙症
大阪府立守口支援学校高等部卒業
2003年:生活介護・就労継続支援B型 事業所
2007年~現在:生活介護・就労継続支援B型事業所
利用機器:クイックトーカー12
利用歴:約10年

「実は今はあまりVOCAを使っていないんです。」

VOCAの使用状況をお聞きしようと取材にご訪問した際に、お母さまが言われた第一声がこの言葉でした。大切そうに大きな巾着袋に入れられたクイックトーカー12を取り出して見せてくださいました。
場面緘黙症のカナさんですが、最近は作業所内では、職員や同僚の方々とはVOCAを使わず、発話でのやりとりをされているそうです。
 
週5日は作業所、土日は家で過ごす事を基本とし、外食や買い物も好きなカナさんですが、場面緘黙症の為、以前は家以外での発声はありませんでした。
10年程前の納品当時の情報を元に、今回改めてお話をお聞きした際の変化に戸惑いながらも嬉しい気持ちでの取材となりました。

まずは、VOCA導入時と現在の様子を教えてください。

「作業所入所時の様子(緑字)」
「現在の様子(青字)」
 
●週3日の通所からスタート。初めての場所に戸惑い、作業所前で立ち止まり中に入れず勤務できずに帰宅する事もあった。

作業所内では朝礼や終礼のリード役を務めている。
 コロナで活動制限のあった際には、手洗いの仕方についての見本役も務めた。

 
仕事に慣れてくる中、対人コミュニケーションの改善のためにVOCA(スーパートーカー)の使用を試みる。メッセージは、作業所の職員の方の声で録音していた。

クイックトーカー12を使用
 自宅にて、5レベル全てに自分で録音して準備


作業の終了や「おはようございます」などの挨拶にVOCAのメッセージ再生で他の人とやり取りを始める。次第にVOCAの発声に合わせて自分もしゃべるようになる。
初めて受診した眼科で、看護師さんに自分の声で応答し、視力検査ができた。
 異動する職員さんへ、作業所の全員の前で感謝の言葉を伝える(VOCAは使わない)。

入所時に比べると、とても自発的になった様子がうかがえます。 VOCAのメッセージを、カナさんご自身が全て自宅で録音して準備されたとのことですが、何かきっかけはありましたか。

VOCAを使い慣れてきた時に自分の声を録音した際には、小さな声だったため聞き取り辛いことが理解でき、他の人にも伝わりにくいことが分かったのだと思います。特定の職員や男性に対しては緘黙症のままですが、以前に比べて表情が明るくなり、嬉しい気持ちを伝えたいなどの感情が行動に表れてきたのだと思います。
 
最近は帰宅後に、「上手くコミュニケーションができたのか」「あの時どうすれば良かったのか」なども話してくれるようになりました。社会人であれば誰にでもあるような悩みですね。

カナさんの成長を見守る中で、お母さまはどんなことを望まれていますか?

ショートステイが利用できるようになるといいなぁと思います。実は、過去に他の事業所で、うまくいかず、部屋の絨毯を剥して、家具を全て部屋の外へ出してしまった、なんてことがあったんです。その時は、事前にきちんと伝えきれず、本人の理解を得ないままショートステイを利用し、結果、不安な思いをさせたためだと思います。私たち(母子)お互いの将来にも備えて、ショートステイが利用できるようになればいいなぁと思います。
 
作業所ご担当者さま:
ご希望に沿えるように支援していきます。ショートステイ利用とはいっても、いきなり宿泊ではなく、日帰り利用や、見学などもできるので、カナさんの気持ちや体調に合わせて工夫できればと思います。

取材を終えて

高校を卒業してから20年弱、VOCAを使い始めてから約10年が経ち、コミュニケーションの手段が確立できたことで、生活全体の満足度が大きく向上していると感じました。
VOCAのメッセージに合わせて自身で発声ができてきたこと、自分の声が相手にどのように伝わっているのかを理解できるようになったことは、大きな変化です。そして自分の意思がしっかりと相手に伝わるようになり、それが表情にも現れ、積極的に関わりを持とうとする姿勢がみられるようになった事が何よりも嬉しい変化です。作業所内だけではなく、初めて訪れた場所でも発声できるようになり、VOCAを通じて生まれた成果をいくつもお聞きする事ができ、改めてその有効性を実感することができました。

クイックトーカー12について

各ボタンにメッセージを録音し、再生するコミュニケーションエイドです。全部で12個のボタンがあり、下部9個のボタンには5つのレベルがあり、内容の切り替えができるので、9×5=45個のメッセージと上部3個のコアメッセージ、合計48個のメッセージが使えます。シートにイラストや文字を記入してボタンに配置する事で録音されたメッセージを確認します。
 

  • コアメッセージ:3個
  • メッセージ:9個×5レベル 合計45個
  • 録音合計時間:12分
製品詳細はこちら(https://www.p-supply.co.jp/products/index.php?act=detail&pid=702)
 

カナさんがクイックトーカー12に録音している事

コアメッセージ(上部3個、レベルに関係なく常に再生できる)
・おはようございます
・作業できました
・今日も一日おつかれさまでした


レベル1:9メッセージ

おはようございます 作業できました 今日も一日おつかれさまでした
ふじプラの作業をしました ふじぶんぐの作業をしました 私はウミガメが好きです、どんな動物が好きですか
忍たま乱太郎が好きです。どんなアニメが好きですか 見てるテレビ番組は何ですか 好きな野球チームはどこですか
しずかにしてほしいです 今日のきゅうしょくはたのしみですね わたしはアニメが好きです


レベル2:9メッセージ
おはようございます 作業できました 今日も一日おつかれさまでした
今から終礼をはじめます あしたの予定をお願いします にんばりさんの作業をしました
これで終礼を終わります はじめましてカナです せいこう産業の作業をしました
私はCDを買いたいです みんなは何を買いたいですか ゆっくりしました


レベル3以降は、職員の方、作業所の同僚のお名前を録音しており、合計48個のメッセージ全てに自分で録音、シートに文字を記入するといった準備をしています。

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