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パシフィックニュース

特別養護老人ホームにおけるリフト活用の取り組み

リフト・移乗用具

特別養護老人ホームにおけるリフト活用の取り組み

リフト導入の方法・介護職員へ普及させた手順とその効果

特別養護老人ホームチアフル遠見塚( 理学療法士 小関佳子 ・ 介護支援専門員 成田智昌)

2016-02-15

特別養護老人ホームチアフル遠見塚はスタッフのほぼ全員がリフト操作を習得しています。リフト導入まで3年の月日を要しましたが、今では、リフトはなくてはならない存在です。全ては職員の笑顔と身体を守るために!!

はじめに

当施設特別養護老人ホームチアフル遠見塚は平成9年に開所した長期入所50名 短期入所20床の従来型施設です。

徐々に重度化する利用者の状態に対して、介護職員はマンパワー頼りで介護をしてきた結果、腰痛発症者は増える一方でした。

平成18年から腰痛予防対策として、外部から講師を招き「ボール体操」「MT-M(筋徒手療法)」、介護技術の講習やスライディングボード等の福祉用具の活用を行ってきました。

今回、介護業務にリフトを導入でき、リフト導入の方法・介護職員へ普及させた手順とその効果について、腰痛に対するアンケート結果をおりまぜて報告したいと思います。

特別養護老人ホームチアフル遠見塚

モーリフト導入までの経緯

H23・H25年に開催された国際福祉機器展で各メーカーのリフトを試用・試乗し、パシフィックサプライ社のモーリフトを選定しました。

選定理由は

   1・吊られても揺れない

   2・シートが体に食い込まず痛くない

   3・使用法が分かりやすい

また、インストラクターによる勉強会を通し、腰痛から介護者を守るための知識、その為のリフト使用の論理的説明を受け、リフト導入するのであれば、モーリフトと決定しました。

リフト導入まで約3年を要しましたが、その期間もインストラクターの勉強会やリフトのデモンストレーション、現状の情報交換などがあり、リフト使用に向けて、腰痛予防の基礎知識を得る取り組みを行っていました。

 

リフトのデモ機使用期間では、できるだけ多くの介護職員が「リフトに触れる」事を主眼とし、操作・吊られる体験を通し、リフト使用のイメージをつかんでもらいました。※勉強会写真1

実際、リフトを体験してみて、「便利だけれど時間がかかりそう」「時間がかかり、他の業務に影響が出ないか心配」「落下や怪我をさせるのではないか」と消極的な意見が聞かれましたが、「2人介助で対応していた所を1人で介助できるのは良い」「長く仕事を続けていく為には必要」「体の負担軽減になる」「慣れれば時間的に余裕ができそう」とリフトに対して期待する意見も聞かれました。

 

勉強会写真1

モーリフトの導入

平成26年3月モーリフト 2台 ベーシックスリング 6枚 導入 (各階1台 スリングシート各3枚)

理学療法士・介護支援専門員・主任介護員が介護職員に個別で講習を開始。まず始めに中堅以上の介護職員を対象に指導を開始しました。

 

《方法》

1・介護職員1人に対して指導者2名とし3人体制で対応

2・指導者の業務時間内に指導

3・5~7回リフトの操作を練習後に利用者で実践(インストラクターより使用開始前に7回程度試用のアドバイスあり)

上記方法で取り組みを開始した所、リフト指導の時間を業務時間内で確保する事が難しく、毎日リフトを活用するに至るまでは時間を要しました。

その期間、リフトを使用できない介護職員からは「早く覚えて使えるようになりたい」と意欲的な発言がある一方、使用できる介護職員からは「使用方法を教わったけれど怖くて使いたくない」「時間がかかって皆に迷惑をかける」といった話が聞かれました。

 

そこで、

1・新しい機器に慣れるまで時間がかかる事は当たり前

2・できるだけリフトを試して使ってほしい

という事で、「効率」より「技術習得」を第一目標として周知しました。

リフト導入1年後、約7割の介護職員が使用できるようになり、毎日リフトを活用できるようになりました。

また、リフト導入後も、インストラクターに来苑して頂き、2度勉強会を設定。現場での疑問、問題点を直接インストラクターから指導・助言を受ける機会を設けた事で、不安解消・意欲向上へと繋がりました。※勉強会写真2

勉強会写真2

導入後の腰痛の変化 

リフト導入前(H26.3)と導入後(H27.2)にアンケートを実施しました。対象者は、導入前が42名、導入後が36名です。

(1)腰痛の有病率と痛みの程度

有病率(導入前が78.6%、導入後が77.8%)、痛みの程度ともほぼ変化はみられませんでした。(表1)

 

(2)腰痛を有する職員に対する1・痛みの程度(VASで測定)2・今現在発揮できている能力(%)をそれぞれ自由記述して貰い、グラフ上に1人ずつ示しています。

導入前・後でデーターの分布状態は同じような図となっています。しかし、1人1人の1年後の経過をみると、痛みの程度は増している傾向がみられました。(図1)
 

 

 

導入後の腰痛の変化 

(3)リフト導入後の職員の評価として

<1>腰背部の疼痛や張り疲労感の変化 <2>移乗動作に関する負担感を-3~+3の7段階で示してもらいました。(リフト導入前・後共に回答の30名)(表2)

腰痛や腰の張り、疲労感は[少し楽になった~楽になった]の項目で、負担感は[楽になった~大変楽になった]に多い回答がみられました。どちらも[変化なし]の回答は、腰痛の無い職員で、二項目共に[大変楽になった]と回答したのは、腰痛で入院経験のある職員でした。これらの結果から腰痛を持っている職員程リフト使用により、疲労感・負担感が軽減されていること、リフト導入に対してマイナスに評価している職員はいないことがわかりました。

 

(4)腰痛による休暇取得

リフト導入前(~H26.3)は10名/42名中が腰痛による休暇を取得、導入後(H26.4~)は腰痛による休暇取得者は0名となっています。

 

(5)リフト導入後のアンケート自由記入欄より

リフト導入後の職員の感想を自由に記入してもらいました。

「移乗動作の負担感が減った 」「リフト使用で今までに比べ物にならない位体が楽になった」など【腰痛の減少】、「今まで職員同士、声を掛け合い二人介助を行っていたが、一人の職員の判断で移乗が出来るようになり負担感が減った」「リフト導入前よりも仕事をすることが楽になった」など【職員の精神面への影響】、「利用者の表情が穏やかである」「移乗後の姿勢も良く楽そう」など【利用者への効果】、「腰痛で休む職員が減少した」「急なシフト交換が減った」など【労務管理の負担軽減】などの記入がみられ、導入前のアンケートで記入のあった「便利だけど時間がかかりそう」という内容はみられませんでした。

リフト導入後の現在

新しく入社した介護職員に対して、介護業務指導期間終了時までにはリフト指導を行い使用できるようになっています。その為、現在は介護職員全員がリフトを使用できる状態です。介護職員の多くは福祉用具に対して興味があり、リフトを導入し職員1人でできる介護が増えたことでリフト活用に至ったと思われます。

使用方法については、施設でのリフト使用マニュアルを作成し職員が同じ手順で操作できるシステムとなっています。

リフト活用の場面では、導入時使用頻度が高いベーシックスリングを選択し使用してきましたが、新たにイージースリングを取り入れ、今後スタンダード車いすの方を含めて、浴室・床敷き布団・トイレ等の様々な移乗介助の場面でリフト活用の場を拡大していく予定です。

 

スリングシートの枚数も増えたものの12名/50名中がリフトを使用しており、いまだ枚数は不足しており、2人介助で移乗介助することはいまだにあります。また、利用者の中にはリフトを希望されない方もいる為、その方の意思を尊重し対応しています。

 

導入後、リフトの不調で使用不可能となり、従来の2人介助対応を行った期間がありました。その時、職員同士みな「移乗動作がこんなに大変なんて・・・・」など改めて、人の力で抱えあげることが利用者・介護職員の負担になっていること、リフトがなくてはならない存在であることを実感する出来事もありました。

まとめ

平成27年度に介護保険法の改正により、特別養護老人ホームにおける長期入所の要件が要介護3以上となりました。更なる利用者の重度化と介護職員の負担増大が懸念されます。一方で介護職員の確保も困難な状況があります。

 

今後、リフトの活用により、より安全で安心な移乗方法を確立していきたいと考えております。そして、今の介護現場の身体的・精神的疲労を軽減し、介護職員・利用者にとって、安全・快適な生活の場、サービスの提供ができるように取り組んでいきたいと思います。

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