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T-Support使用による脳卒中片麻痺患者へのアプローチ①
装具
T-Support使用による脳卒中片麻痺患者へのアプローチ①
~T-Supportのアイデアが私に降りてきたあの日のことは今も忘れない~
2017.03.15 中谷 知生(医療法人尚和会宝塚リハビリテーション病院・理学療法士)
皆さまは【T-Support】をご存知でしょうか。脳卒中片麻痺患者の下肢装具を用いた歩行トレーニング時に併用することで、従来より高い治療効果を得られることが期待できる、全く新しい歩行補助具です。【T-Support】は、宝塚リハビリテーション病院 中谷知生先生とKAWAMURAグループ・川村義肢㈱の共同開発により生み出されました。今回より4連載にて、開発者である中谷先生に開発経緯や治療効果、今後の可能性についてご執筆いただきます。
はじめに

本稿では、4回に分けてT-Supportの開発経緯と治療効果、使用方法、これからの可能性などについて私が考えていることを書かせていただきます。第1回では、私がはじめて患者さんの歩行補助を目的に、弾性バンドを使うようになったきっかけとその意味について、です。

2012年1月 すべてはここから始まった

あの日のことは今でも鮮明に覚えています。2012年1月、当時の宝塚リハビリテーション病院は脳卒中の装具療法についてはまだまだ後発組で、長下肢装具の処方数がようやく増え始めた、という状況であり、現場の理学療法士は歩行トレーニングにおいてどのように下肢装具を使いこなせばよいのか、試行錯誤を繰り返している状況でした。

 

そんななか、当時臨床3年目の後輩理学療法士のM君から、担当患者さんのトレーニングを一緒に診てくれないか、と相談を受けました。『左片麻痺の患者さんで、長下肢装具での歩行動作の中で代償動作を何とか減らしたいのですが…』という相談でした。歩容を見てみると、長下肢装具を装着した状態で、麻痺側下肢の立脚後期の股関節伸展が十分に引き出せず、スイングにかけて体幹の側屈や前傾などの代償動作が強く見られていました。患者さんにお話を伺うと、『麻痺のある脚が重たくて…どうしてもこんな感じでがんばってしまう』とのことでした。

 

当時私は千里リハビリテーション病院の吉尾雅春先生、国際医療福祉大学の山本澄子先生のセミナーに参加し、片麻痺者の歩行における股関節伸展運動の重要性を理解しはじめたころでしたので、どうすれば患者さんが頑張らずに、立脚後期の股関節伸展運動を引き出すことができるのかを常に考えていました。そしてその時、後にT-Supportへとつながるあのアイデアが私に降りてきたのです!

 

 『M君、この長下肢装具にゴムバンドを巻き付けて、スイングを手伝ってみたらどうなるかな?』

 

おそらくどの病院のリハビリテーション室にも置いてある、筋力トレーニング時に使用するカラフルなゴムバンドを2本持ってきて、1本を腰に巻き、そしてもう1本を股関節前面をまたぎ、長下肢装具の大腿カフに停止するようにして巻き付けました。イメージは吉尾先生がその重要性をご指摘しておられる、股関節屈曲動作の主動筋である大腰筋です。股関節屈曲動作をゴムバンドで補助すれば、代償動作を軽減できるのではないか?と考えたからです。ところが、ゴムバンドを装着すると、『立脚後期の股関節伸展角度が増大した』のです!この現象に私は非常に驚きました。

 

ちょうどその頃、当院では試作版のゲイトジャッジを川村義肢からお借りしておりましたので、歩行時の股関節伸展角度を計測した際の映像が残っています(図1)。左側がゴムバンド未装着、右側がゴムバンド装着時です。少し見づらいですが、立脚後期の姿勢の変化がおわかりいただけると思います。ゲイトジャッジの青いグラフが股関節の角度を表しており、正が伸展、負が屈曲です。装着時の立脚後期の股関節伸展角度が増大しています。

 

この衝撃は未だに忘れられません。ゴムバンドが発揮する力は、股関節の屈曲を補助する力のはずです。ところが実際にゴムバンドで股関節の屈曲を補助してみると、患者さんは股関節の伸展を増大させる。私がまったく予想していなかったこの運動の変化を、川村義肢の藤本氏に報告し、プロトタイプの作成が始まったのでした。

図1:初めてゴムバンドを装着した症例
図1:初めてゴムバンドを装着した症例
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